母魚1
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小学校の入学式。
ぽつぽつといる綺麗な奥様方に混じって、うちの母さんがいた。
小学校の卒業式。
「海野くんのお母さんってきれいだねー。」
そんな風に飛び交う声が自慢だった。
中学校の卒業式。
「アレ海野おばさんか?」
「いや、顔つきは似てるがありゃどう見たっておばさんじゃねえだろ。
お姉さんじゃねえの?」
「あいつ一人っ子だったはずだけど?」
「じゃあマジでおばさんか?」
「まじかよ、ありえねー若さじゃねえか。」
このとき俺はすでに奇妙に思っていた。
高校卒業式。
顔に数多くのしわのある、または仮面でもかぶってそうな保護者方の中にひときわ目立ってうちの母さんがいた。
「お、おい。アレってもしかして海野んとこのおばさんか?」
「ああ、間違いねえ。ありゃ噂の海野んところのお母様だ。」
「ありゃとても30代にはみえねえな・・・・」
「30どころか「じつは未成年なんです」って言われても疑わねーぞ、たぶん。」
「いや、さすがにそりゃねーだろ。」
「そうか?」
ここまでくると、自慢するどころか、もう不気味でしかなかった。
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